企業買収は、他社の株式や事業を取得するM&Aです。その手法には、株式譲渡、事業譲渡、株式交換、第三者割当増資、会社分割があり、買収目的や譲渡対象の状況等によって選択します。
買収により、経営資源の確保、組織再編、多角化によるリスク分散、節税効果が見込めます。特に、企業買収によるシナジー創出は重要であり、デューデリジェンスを徹底し、統合プロセスを適切に管理することが成功の鍵です。
M&Aにおける買収の流れは、目的達成を可能にする会社を選定し、買収方法を決め、企業価値評価、デューデリジェンス、買収実行を経て経営統合を行うというプロセスです。多く用いられる買収手法は、株式譲渡や事業譲渡で、各方法の特性を理解する必要があります。
M&Aにおけるソーシングは、買収希望条件を明確にし、買収対象会社の情報収集から選定、交渉までのプロセスを指します。この段階は、M&Aの成功に非常に重要で、専門家やM&A仲介会社と一緒に進めることが一般的です。
ソーシングにはプル型とプッシュ型があり、それぞれにメリット・デメリットがあります。プル型は、M&A仲介会社からの紹介を待つ方法であり、プッシュ型は(M&A仲介会社を通じて)積極的に候補企業にアプローチする方法です。
M&Aソーシングのプロセスは、自社の条件や目的の明確化から始まり、候補企業の情報収集、ロングリストの作成、ショートリストへの絞り込み、最終候補企業の選定、そして交渉に至るまでの6ステップがあります。それらに先立って、M&A仲介会社を選定したり、秘密保持契約が締結されます。
企業買収が失敗する要因には、事前の準備・調査の不足が挙げられます。
具体的な事例として、粉飾決算が発覚したケースや、のれん代による損失計上が発生した事例があります。これらは適切なデューデリジェンスにより、ある程度は回避可能です。また、投資対効果が期待に達しないケースも多く、市場原理による価格上昇や不十分なデューデリジェンスが原因で「高掴み」につながりがちです。さらに、M&A後の企業イメージの悪化もしばしば見られ、これは文化的な違いやコンプライアンス問題に起因することが多いです。
これらの失敗要因を避けるためには、目的の明確化、適切なデューデリジェンスの実施、そして買収価格設定の妥当性が重要です。
クロスボーダーM&Aには、一般に、事業拡大や技術獲得など多様な目的が存在します。市場への新規参入や、海外の技術を活用した製品開発が可能になることがメリットですが、カントリーリスクや訴訟リスクなどのデメリットも伴います。
クロスボーダーM&Aは、IN-OUT型(日本企業による海外企業の買収)とOUT-IN型(海外企業による日本企業の買収)の二つの方式がありますが、前者が殆どです。
実施する際には、交渉先の選定や契約の締結、企業文化の統合に向けたPMIの実施が重要であり、交渉先の国に精通した専門家やM&A会社の存在が成功に向けたポイントとなります。
上場会社を買収するM&Aでは、買収プレミアムが支払われることが少なくありません。買収プレミアムとは、市場価格から計算される時価総額を、買収価格が上回る差額部分です。支払う背景には、主にシナジー効果の期待と無形資産の価値評価があります。例えば、原材料の共同購買による費用削減や、ブランド力の強化が期待される場合、買収プレミアムが提示されます。また、無形資産としては、知的財産権や企業文化などがあり、これらが直接市場株価には反映されない可能性がありますが、企業価値の算定上は考慮されます。
PMI(M&A後の経営統合)では、一般に、事前のデューデリジェンスで発見された課題を踏まえ、短期的な100日プランを立てます。統合プロセスにおいては、業務の合理化やシステムの統一が行われ、中長期的には次世代リーダーの育成も目指されます。買収の成否を左右するPMIでは、必要に応じて専門家のサポートを受けながら、業務効率化やコスト削減、生産性の向上、従業員の流失リスクの軽減を図っていきます。
中小企業に対する「経営資源集約化税制」は、M&Aを通じて生産性の向上や経営安定を図ることを目的とした税制優遇措置で、対象となるのは、経営力向上計画の認定を受けた中小企業です。この制度では、設備投資減税、準備金の積立、雇用確保を促す税制などが提供され、事業の承継や再編を助けます。特に設備投資では、一定の設備を新規取得した際に投資額の10%を税額控除するか、全額即時償却が可能です。また、M&A実施後のリスクへの備えとして、準備金を積立可能であり、積立てた金額は損金算入されます。さらに、従業員の給与増加に応じて税額控除を受けることができるため、雇用の安定と拡大を促進します。