事業承継の問題

会社の黒字経営が続いていても、後継者が見つからないために事業の継続を悩んでいる経営者は少なくありません。中小企業の経営者の平均年齢は年々上昇し、後継者が決まらず黒字廃業を選択する企業も出てきています。多くの経営者が、資金借入時に金融機関から個人保証を求められることが、事業承継の際の大きな障壁となっています。

中小企業の経営者年齢は、2000年には「50歳~54歳」層が最も多かったものの、2020年では「60歳~64歳」「65歳~69歳」「70歳~74歳」と高齢層に分散しています。後継者がいない企業は約6割に上り、この問題の解決は日本全体で喫緊の課題とされています。

休廃業や解散の件数は、依然として高水準にあり、特に黒字廃業が多いという点が指摘されています。こうした状況の中で、M&Aが事業承継の一つの解決策として注目されています。近年は、事業承継を目的にM&Aを行う傾向が強まっており、M&Aを機に個人保証が解除される点にも関心が高まっています。なお、個人保証の問題に関しては、国も対策を講じており、企業業績を評価して融資を行い、経営者の個人保証をなるべく取らないように金融機関を指導しています。

中小企業の業績については、業況判断DIや売上高・利益などのデータとして、緩やかな回復基調が続いています。M&Aの実施状況については、M&A後の満足度や、M&A実施企業の利益成長率、労働生産性が向上しているようです。

総じて、M&Aを通じた事業承継は中小企業にとって有効な手段であり、M&Aに対する経営者の心理的なハードルが下がってきているのが近年の傾向です。


▷詳しくは:後継者不足と事業承継|経営者の平均年齢・業績、黒字廃業も多い

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