第三者承継

事業承継の類型には親族内承継、社内承継、第三者承継(M&A)、および株式公開(IPO)があります。親族内承継では将来の事業承継を見越して後継者を早期から育成できる一方で、複数の後継者がいる場合は争いのリスクも考えられます。社内承継はスムーズな業務引継ぎが可能であり、経営能力を持つ人材に任せられますが、後継者には譲受・納税のための資金力が求められます。第三者承継は事業の存続と雇用の継続が可能であり、経営者に利益をもたらすケースもありますが、親族内や社内承継とは異なる注意点があります。株式公開は事業の拡大や継続性を高める効果があるものの、物的な事業承継の解決にはならない場合が多いです。

自社株承継の方法には、生前贈与、相続、株式売買の3つがあります。生前贈与は贈与契約を交わし、無償で株式を譲る方法で、贈与税・相続税が課税されます。相続は経営者が亡くなった際に遺言や遺産分割協議を通じて行われ、相続税が課税されます。株式売買は譲渡対価と引き換えに株式を渡す方法で、譲渡所得税が課税されます。

自社株承継の税金面に関しては、譲渡側と譲受側の双方に税金が課せられることがあります。譲渡側は対価を受け取る場合、所得税や復興特別所得税、住民税が課せられ、譲受側は生前贈与や相続の場合に贈与税や相続税が課せられます。また、事業承継税制により、贈与税や相続税の納税を猶予・免除してもらえるケースもあります。

非上場会社での株式譲渡には「譲渡制限」が設けられている場合が多く、譲渡承認請求、承認機関による承認、株式譲渡契約の締結、譲渡実行・株主名簿の書き換えなどの手順が必要です。事業承継を進めるにあたっては適正価格の検討や専門家のサポートが必須であり、譲渡先の選定や各種手続には豊富なネットワークと専門知識が求められます。


▷詳しくは:事業承継における株式譲渡|第三者承継で一般的な手法、注意点も解説

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